電気学会行動規範 1〜5

1.人類と社会の安全,健康,福祉をすべてに優先するとともに,持続可能な社会の構築に貢献する。
1-1  効率・利益優先への戒め

会員は,効率化や目先の利益のみを優先することなく,安全や健康,福祉を常に最優先に考え行動する。また,資金や人的資源などを理由に安全性の低下や健康,福祉が阻害された状態を放置しない。

1-2  安全の確保と環境保全

会員は,電気技術が公衆の安全や環境を損なうことにより健康および福祉を阻害する可能性があることを強く認識し,技術が暴走し破滅的な結果を招かないよう,安全の確保と環境保全のため常に最大限の努力を払うと共に,安全と環境管理に関する責任体制を明確化する。

1-3  安全知識・技術の習得

会員は,電気技術に関連する事業,研究などにおいて,法令・規則を遵守することはもちろん,安全を確保するために必要な専門知識・技術の向上に努める。

1-4  持続可能な社会の構築

会員は,電気技術を通じて人類と社会の安全,健康および福祉に貢献し,経済の発展や資源・エネルギーの確保,環境の保全という課題をともに克服していくと共に,国際的な平和と協調を維持していきながら,未来の世代がより安全かつ快適に生活できる持続可能な社会を構築していく。

2.自然環境,他者および他世代との調和を図る。
2-1 自然環境,他者および他世代との正常な関係の維持

会員は,科学技術が損なってきた自然環境,他者の生命や人格,および他世代との間の互恵的な関係を正常化することが,科学技術の一翼を担う電気技術者の責任であると自覚し,そのために率先して行動する。

2-2 畏敬の念

会員は,自然環境,他者および他世代によって生かされ護られていると同時にこれらは自らの責任において護るべきものであることを強く認識し,これらに対して本来献げるべき畏敬の念を取り戻さなければならない。

2-3 謙虚さと英知の結集

会員は,個人の能力の限界を謙虚に受け止め,他の専門家と協同して英知を結集し,科学技術が地球規模かつ長期的観点から人類と社会の安全,健康および福祉に貢献するように研究開発を推進する。

2-4 社会の一員としての自覚

会員は,社会の一員として主体的に責任を果たすため,技術者共同体の枠に閉じこもらず,視野を専門技術以外にも拡げ,技術以外の分野からも広く学び,もって社会的発言力を高めなければならない。
学会は,会員のそのような努力を支援することによって,自らも持続可能な社会の一構成員としての役割を果たす。

2-5 倫理観の陶冶

会員は,技術者の倫理観の欠如が自然環境,他者および他世代との正常な関係を損なう結果を招くことを認識し,技術力向上は言うに及ばず,自己の倫理観の陶冶にも常に関心を持ち,互いにそのような雰囲気の醸成を日頃から心がける。

3.学術の発展と文化の向上に寄与する。
3-1 学術の発展への寄与

会員は,電気に関する学術及び技術の絶えざる更新・改善・発展を通して,持続可能な社会の構築に貢献する。
学会は,会員の諸活動を通じて公表された科学的・技術的知識の蓄積・普及や様々な技術標準の策定などを着実に実行していく。

3-2 着実な技術伝承の実践

会員は,電気技術者が社会インフラシステムの安全な設計と運用に重大な責任を持っていることを自覚し,技術力の維持・向上に努めつつ,着実な技術伝承を実践する。

3-3 文化の向上への寄与

会員は,新たな技術の供与にとどまらず,新技術が社会に生み出す文化が健全であるように,技術にかかわる教育・啓発活動を個々の所属する組織だけでなく,学会などを通じて広く積極的に行い,社会の精神文化の向上に貢献する。

3-4 批判的精神の発揮

会員は,電気技術に関する諸課題に対して,既成概念にとらわれず,科学的検討にもとづく建設的批判を,自らの責任において適宜に誠実に行っていくことを,学術団体である学会に属する会員としての使命と自覚する。
学会は,会員にそのための議論の場を提供するなど会員の活動を積極的に支援するとともに,自ら社会に向かって適宜に発言していく。

3-5 迅速・的確なコメントの発信

学会は,報道機関等が大きく取り上げるような,電気技術に関連した事件・事故が起こった場合,専門的かつ中立的な立場でコメントを発信し,無用な混乱を排除するよう努める。

4.他者の生命,財産,名誉,プライバシーを尊重する。
4-1 技術の持つ矛盾への認識

会員は,安全,健康および福祉を目的とする電気技術の発展が時には他者の生命,財産,名誉,プライバシーを損なう恐れがあるという深刻な矛盾を真摯に受け止め,他者及びその総体としての社会への脅威を低減するために努力する。

4-2 技術の不完全性への認識

会員は,技術は限られた時間と予算などの中で最善を尽くした結果として世に出されるものであって,常に不完全性を残しており,危険と欠陥を内包していることを忘れてはならない。フェールセーフなどの安全性確保や,事故データの収集・一元化などの改善への努力を惜しんではならない。

4-3 技術の悪用への注意

会員は,技術は使い方によっては凶器となりうることを強く認識し,技術の製造者としては可能な限り悪用防止の工夫をし,技術の使用者としては悪用して他者の生命,財産,名誉,プライバシーを侵害しないように心がける。

4-4 情報通信技術による名誉毀損,プライバシー侵害の防止

会員は,近年急速に発達した情報通信技術が,名誉毀損やプライバシー侵害を容易に引き起こす可能性があることを意識し,ネットワークの利用,電子情報の保管・管理にあたっては特に気を付ける。

4-5 技術移転に伴うリスク回避

会員は,自らが研究開発し,製造・提供する製品とサービスに万全を期するよう最大限努力するとともに,技術の海外移転に際しては,安全保障を脅かす可能性のある技術流出を防止するために十分な措置を講ずるよう努める。

5.他者の知的財産権と知的成果を尊重する。
5-1 創造性・独創性を尊重する風土の形成

会員は,優れた技術の研究,開発,利用および教育が,各人の創造性と独創性を源泉として遂行されることを踏まえ,自らが所属する組織内も含め,他者のアイディアや手法,その他知的成果全般の帰属を確認・尊重する。

5-2 産業財産権侵害を回避するための事前調査の励行

会員は,特許権に代表される産業財産権が,発明者の創意工夫の優れた果実であるとともに,こうした権利の保護が,産業社会の公正なる発展の原動力となっていることを認識し,意図的に侵害することがないように,基本的な事前調査を励行する。

5-3 著作権侵害を回避するための基本ルールの理解促進

会員は,論文やソフトウェア・プログラムなどの著作権も,産業財産権同様に著作者の創造性と努力の結晶であり,学術的価値のみならず多大な経済的価値を有することも少なくないことを理解し,著作者人格権も含め,最大限尊重する。
学会は,学術団体として,自ら刊行する電気学会論文誌など各種の著作物が他者の著作権を侵害することがないように,会員に対して基本ルールを遵守するように働きかける。

5-4 営業秘密の不正取得・使用・開示の禁止

会員は,秘密として管理されている事業活動に有用な技術あるいは営業に関わる情報も,法的保護を受ける貴重な知的財産であることを認識し,不正に取得・使用・開示することのないように細心の注意を払い,それらの権利を擁護する。

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