電気学会行動規範 6〜10

6.すべての人々を思想,宗教,人種,国籍,性,年齢,障害に囚われることなく公平に扱う。
6-1 他者の尊重

会員は,自分と異なる他者を,思想・宗教・人種・国籍・性・年齢・障害・職業・役職・雇用形態などにより差別せず,その異質性を尊重し,他者と互いに協調して,機会均等で公正な社会の実現に努める。

6-2 差別的行為の禁止

会員は,自らの差別意識をなくすように努めるとともに,職場や大学など自己が所属する組織におけるセクシャルハラスメント,パワーハラスメント,アカデミックハラスメントなど,優位性のある立場を利用した他者への差別的侵害行為の撲滅に努力する。

6-3 技術の差別助長的性格への注意

会員は,技術が差別を助長し拡大させる性格があることを認識し,その開発にあたっては,差別を受ける人々の不利益にも十分配慮する。

6-4 異分野の人々との協働

会員は,電気技術が政治,経済,法律などの異分野の学問や社会生活全般と深く関連していることを自覚し,これらに携わる多様な人々とも広くコミュニケーションを図り,大規模かつ複雑な社会の諸課題の解決に,協働して取り組む。

7.プロフェッショナル意識の高揚につとめ,業務に誇りと責任を持って最善を尽くす。
7-1 専門能力の不断の向上

会員は,電気技術に関連する業務において,求められる専門技術や世の中の倫理観が時代と共に変化することを認識し,法令・規則を遵守することは勿論,常に自らの専門知識・技術の習得ならびに倫理的行動を取るために必要な能力の向上に努める。

7-2 関係者の専門能力向上のための環境整備

会員は,電気技術の専門家として自らが研鑚に励むだけでなく,自身の監督下にある者,さらには関係者の専門能力維持・向上のため,研鑽の機会を与えると共に環境整備に努める。

7-3 社会への影響を見据えた研究開発の推進

会員は,研究開発とその成果の利用にあたっては,電気技術がもたらす社会への影響,リスクについて十分に配慮する。

7-4 技術成熟の過信への戒め

会員は,電気技術の成熟を過信して,安全性への配慮を怠ってはならない。今後とも新たな技術的問題が出ることがありうるとして,緊張感を持って新しい事象が発生する可能性に留意する。

7-5 ワーク・ライフ・バランスの実現

会員は,一人ひとりが社会の一員であるとの認識に立ち,家族や地域社会との交流を大切にしながら,ワーク・ライフ・バランスに心がけ,思いやりの心を常に持ち,誇りと責任を持って誠実かつ積極的に業務を実施する。

8.技術的判断に際し,公衆や環境に害を及ぼす恐れのある要因については,その情報を時機を逸することなく,適切に公開する。
8-1 情報公開の体制整備

会員は,所属する組織において,情報公開についての迅速かつ適切な判断ができる風土醸成および情報公開の手順を含めた体制整備がなされているかに日頃から注意を払い,不十分な場合は,組織に改善を働きかける。

8-2 正確な情報の取得

会員は,事故や安全に係る情報が,公衆や環境に大きな影響を与える可能性があることを認識し,専門家として常に正確な情報の取得および確認を励行する。

8-3 情報公開の手順

会員は,自身や所属する組織に不利な情報や守秘義務違反に係る情報であっても,公衆や環境に大きな影響を与え,公衆の安全確保のために公開する以外に手立てがないと判断した場合は,迅速にその情報を公開する理由を明確にし,所属する組織の情報公開の制度に則り,公開の可否について検討する。

8-4 社会に対する説明責任の遂行

会員は,情報を公開する場合には,時機を逸することなく,相手に応じた適切な表現を用いることに留意し,専門家でない者にもわかりやすい明快な説明を行う責任があることを自覚する。

8-5 非公開情報の取り扱い

会員は,公衆の安全・利益等のために公開することが不適切と判断されるものについては公開してはならない。ただし,公開しない理由についても必要に応じて説明しなければならないことを認識する。

9.技術上の主張や判断に際しては,自己および組織の利益を優先することなく,学術的な誠実さと公正さを期する。
9-1 組織の利益と技術上の主張・判断の区別

会員は,技術上の主張・判断については,組織の利益を優先することなく,自主的・自律的,かつ誠実に行動しなければならない。

9-2 事実の尊重

会員は,科学技術に関わる発言をする際には,科学的に得られた事実に基づかなければならない。すなわち,データ改ざん,捏造,盗用,隠蔽などはもちろん,自分に都合のよい誇張,歪曲など一面的な表現をしていないか,常に自問する。
学会は,会員の不正行為が明らかとなった場合には,厳正に対処するとともに,事実に基づかないことで名誉を傷つけられた会員を支援するべく,社会的信頼の回復に向けて,迅速かつ適切な措置を行う。

9-3 出典,データなどの保管,管理

会員は,主張や判断の基になった出典や,自ら取得した実験データの記録などは,必要に応じて後で追えるように保管,管理しなければならない。
学会は,学会誌,論文誌,技術報告書,図書の発行ならびに図書室を運営し,これを支援する。

9-4 事実,推察の区別

会員は,自らの能力をどんなに高めても,まだ分からない事もあることを認識し,既知の事実,学理からの導出,自らの経験等に基づく推察などをきちんと区別しなければならない。

9-5 技術上の主張や判断における誠実さ,公正さ

会員は,話し合う相手が,電気技術の専門家であろうとも,電気技術の専門知識を持たない人々であろうとも,誠実,かつ公正な立場で対応し,相手に理解してもらえる適切な表現を使わなければならない。

10.技術的討論の場においては,率直に他者の意見や批判を求め,それに対して誠実に対応する。
10-1 討論の場における率直さ

会員は,討論の場においては,自分の主張をするだけでなく,率直に他者の意見や批判を求め,区別することなく聴く態度が必要であり,一人でも不誠実,公正さを欠く行動をすれば,技術者全体の信用が失われることを忘れてはならない。

10-2 否定的な意見の受入

会員は,独力で知識,能力を高めるだけでなく,他者とコミュニケーションを図り,特に否定的な意見の中からも新たな視点が得られるよう誠実に受け止めなければならない。

10-3 他の技術者との交流

会員は,同じ技術分野の技術者と討論することはもちろん,異なる技術分野の技術者とも機会を捉えて積極的にコミュニケーションを図り,自らの能力だけでなく,相手の能力をも高めるべく誠実に議論し,誤りがあれば勇気を持って正す。
学会は,研究発表会,講演会,講習会,見学会などの開催を通して,交流の場を提供するとともに,国内外の異なる技術分野の関係学術団体とも,協力および連携する。