タイトル | スイッチング素子1個の単相スイッチング電源入力電流波形改善 |
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著者 | 五十嵐 康雄, 高橋 勲 |
巻号 | 電学論D Vol. 117, No. 8, pp. 927-932, 1997 |
推薦理由 | 単相PFCコンバータの代表的な方式の一つであるディザーコンバータを初めて電気学会論文誌として紹介した論文である。高力率整流回路の中でも,ディザー整流回路は1 個のスイッチで構成されるため,簡単な回路でしかも制御が容易であるため小容量の回路に向いている。ディザー整流器の原理的な提案は別論文で発表されているが,本論文は電気学会論文誌に投稿された初めての論文であり,代表的なチョッパ回路との組み合わせでの特性比較を示している。PFCコンバータの原点を構成する代表的な論文の一つとして注目論文として推薦する。 |
タイトル | Single-phase Power Conditioner with a Buck-boost-type Power Decoupling Circuit |
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著者 | Shota Yamaguchi, Toshihisa Shimizu |
巻号 | IEEJ Journal of Industry Applications,Vol. 5, No. 3, pp. 191-198, 2016 |
推薦理由 | 家庭用の太陽光発電用インバータは,単相系統に接続するために,インバータ直流側には電源周波数の2 倍の周波数で電力脈動が発生する。一般的には,この電力脈動を補償するために大容量の電解コンデンサを接続する必要がある。しかしながら,体積や寿命の観点から電解コンデンサではなくフィルムコンデンサへの置き換えが望まれている。近年,この電力脈動をアクティブに補償する回路方式が数多く提案されている。本論文では,電力脈動補償回路に昇降圧チョッパ回路を適用することによって,従来方式に比べて補償回路の直流電圧を20%低減でき,その結果,高効率な回路を提案し,実験により実証している。以上のことから,本論文では電力脈動補償回路を対象として実用的な回路方式の提案と実機検証を行ており,注目論文として値するものである。 |
タイトル | キャリア比較方式を用いた仮想AC/DC/AC変換方式によるマトリックスコンバータの制御法 |
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著者 | 伊東 淳一, 佐藤 以久也, 大口 英樹, 佐藤 和久, 小高 章弘, 江口 直也 |
巻号 | 電学論D,Vol. 124, No. 5, pp. 457-463, 2004 |
推薦理由 | マトリックスコンバータは直流ステージを有しないことから,高効率化,小型化,長寿命化の可能性を秘めている。しかし,入出力波形を同時に制御する必要があるため,制御方式が複雑化する。本論文では,マトリックスコンバータを電流形整流器と電圧形インバータからなる間接形電力変換器に仮想的に置き換え,キャリア比較方式を前提とした仮想AC/DC/AC方式によるマトリックスコンバータの制御法を提案している。入出力の制御を分離して考えることにより,従来のインバータでの変調方式や制御法の応用が容易になる。本論文の発表後,仮想AC/DC/AC変換方式の波形改善方法や,モータ駆動システム,風力発電,無効電力補償,FRT制御などマトリックスコンバータの応用範囲を拡大する技術発表が続いただけでなく,空間ベクトルやキャリア比較方式に基づくスイッチング回数の最小化など,他の変調方式も含め多数のマトリックスコンバータに関する論文発表が活発化した。この結果,研究に大きな進展がみられ,この分野の研究を加速させる一助になったので,注目論文として推薦する。 |
タイトル | 電力用アクティブパッシブ回路 |
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著者 | 船渡 寛人, 河村 篤男 |
巻号 | 電学論D, Vol. 113, No. 5, pp. 601-610, 1993-5 |
推薦理由 | 電力変換回路の高性能化により, 交流電動機駆動の普及による家電・電動車両の高性能化・省エネルギー化など種々の分野で高機能化・省エネルギー化が進められてきた。一方, 電力変換回路は単に電力を変換して供給するに留まらず, 無効電力補償装置やアクティブフィルタなど電力用の特別な機能を発揮する用途も開発されている。例えば, 直列形電力用アクティブフィルタでは高調波に対して等価的に高抵抗として動作するように制御しており, 特定のインピーダンス発生機能を持たせるような応用が知られている。本論文では, 電力変換回路を用いて過渡応答も含めてリアクタンス(インダクタンスまたはキャパシタンス)を発生させる回路を提案して実験により実証を行っている。本回路は外部から見るとパッシブなリアクタンス素子として動作するが, アクティブリアクタンスを発生させるのでインダクタンス・キャパシタンスの切替やその値を変化させることが可能である。また, リアクタンスを負の値に設定することも可能であり, 後に負のリアクタンスの発生とその応用に関する論文が発表されている。このように, 電力変換回路の新しい用途を開発し, 特に負のリアクタンスという概念に結びついた論文であるので注目論文として推薦する。 |
タイトル | 電圧形PWMインバータが発生するコモンモード電圧のアクティブキャンセレーション |
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著者 | 小笠原 悟司, 綾野 秀樹, 赤木 泰文 |
巻号 | 電学論D, Vol. 117, No. 5, pp. 565-571, 1997-5 |
推薦理由 | 電力変換器が発生する伝導ノイズ,放射ノイズなどの電磁障害(EMI)は,自機器あるいは周辺機器の誤動作をもたらす恐れがあるため,その低減が強く求められている。上記の電磁障害は,コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズに分類され,前者の抑制方法としては,コモンモードチョークやコモンモードトランスなどの受動素子を利用した対策が広く用いられている。一方で,現在,SiCやGaNなどの高速スイッチングデバイスを使用した電力変換装置が普及し始めており,それらが発生する電磁障害に対する懸念が広がりつつある。本論文では,コモンモードノイズの根本要因であるコモンモード電圧の変動に対して,能動素子とコモンモードトランスを使用し,逆位相の電圧を与えることにより打ち消す方法が提案されている。提案方式のように能動的にノイズを処理する方式は斬新な考え方であり,ノイズの大幅低減を実現できる。この方式は製品に応用された例もある。さらに,今後,高速スイッチングデバイスが普及した場合には,使用するコモンモードトランスの容積を小型化できる可能性がある上,ノイズ低減効果の期待も大きい。以上のように,本論文で提示された技術は,論文発表当時のみならず,今後の電力変換器に対しても有用性が高いものと言えるので,ここに推薦するものである。 |