部門長のご挨拶

未来社会を支える産業応用部門

Industrial Applications Society supporting the future society


電気学会 産業応用部門 部門長
川上 紀子(東芝三菱電機産業システム株式会社)
Noriko Kawakami (Toshiba Mitsubishi-Electric Industrial Systems Corporation)
President, Industry Applications Society, IEEJ

 このたび,産業応用部門長を務めることになりました川上です。皆様のご支援・ご協力を賜りながら,産業応用部門,および電気学会の発展に貢献できるよう努める所存ですのでよろしくお願いします。
最近は,日本の生産年齢人口減少に伴う人手不足により,建築工事の遅延,飲食店の営業時間短縮,運送業の事業縮小,さらには倒産なども報じられるようになりました。日本の生産年齢人口(15歳~64歳)は,1995年の8726万人をピークに2015年は約1千万人減少し,2050年にはさらに2千5百万人近い減少が予想されています。対策として,定年延長や,外国人の就労範囲の拡大などが論じられていますが,何より人工知能(AI)の活用や,ロボットや高度な制御を活用した自動化・省力化を進め,少ない労力で生産性,快適性を維持することが重要になります。
 産業応用部門は,電気エネルギーの発生・変換・制御,自動車・鉄道等の運輸,モータ・ロボットをはじめとする設備とそのエネルギー管理,水道等のインフラ,家電等の民生向け機器に至るまで,幅広く,まさに電気工学が貢献を期待されている分野を網羅しています。産業応用部門の技術分野の発展が,人口減少社会の諸問題を解決するカギを握ると言っても過言ではありません。また,それは今後の世界全体の課題解決に貢献し,日本のプレゼンスを示すことでもあります。
 産業応用部門は,これら技術分野の現在・将来を担う会員の皆様がより一層活躍するための,学術的なインフラでありたいと思います。先輩諸氏の成果を引き継ぎ発展させるべく,具体的には以下の項目に注力いたします。
(1) 部門英文論文誌のSCIE登録
 論文誌は学会の重要なインフラであり財産です。産業応用部門では,国際的なプレゼンスの向上のため,2012年7月に部門英文論文誌を発刊しました。その後,発展をつづけ,2016年にElsevier社の論文誌データベースScopusに登録されるに至りましたが,さらに国際論文誌として確固たる地位を築くべくSCIE(Science Citation Index Expanded)登録を最重要課題として取り組みます。会員の皆様には,是非,部門英文論文誌への投稿とともに,掲載された論文の積極的な引用をお願いします。
なお,母国語で最新の学術情報の発信と収集・議論ができる和文論文誌も引き続き重要であることは言うまでもなく,一層の充実を図り英文論文誌と共存していきます。
(2) 国際化の継続的な推進
 日本の産業界にとって,国際的な事業活動は必要不可欠であり,産業と密接にかかわる産業応用部門の活動も同様です。現在進めている,部門主催の国際会議の充実,アジア地区の学協会との連携強化,また世界規模で影響力を持つIEEEに対し日本の存在感を示す為の戦略立案と実行に引き続き注力いたします。
(3) 多様化の推進
 多様化は世界の潮流であり,活力維持のためにも不可欠です。一方で,電気学会の女性会員比率は約2%と,国内でも最も女性が少ない学協会の一つです。一朝一夕に女性会員を増やす手段はないのですが,長期的な視点で,子ども理科教室では,女子児童が進路選択時の将来像の一つとして電気エンジニアを描けるように計画します。また,数少ない女性教員・女性エンジニアの皆様がより一層活躍できるように,ロールモデルの提示や相互交流の場を部門大会で設けます。
(4) 魅力ある部門行事と収益の確保
 産業応用部門大会では,2017年の函館大会から,初日にオープニングとプレナリーセッションを設け,中国・韓国の代表者のスピーチを頂く形としました。新しい試みにより魅力ある部門行事で適切な収益をあげ,その収益をさらに魅力的な学会活動とするために投入するという好循環を維持したく考えています。
 産業応用部門は会員の皆様で構成・運営され,皆様に活用されることが目的です。各種行事・運営などに関し,ご意見・ご提案をお待ちしています。役員会・関係会議で議論し,期待に応えるよう運営に反映する所存です。