平成26年 電力・エネルギー部門「研究・技術功労賞」受賞者

 電力・エネルギー部門(B部門)では,長年,地道な活動を続けてこられ,技術の発展に貢献された研究者または技術者の方々の労に報いるとともに,電力・エネルギー分野技術の更なる発展を図ることを目的とし,平成18年から,部門表彰制度として「研究・技術功労賞」を新たに設けております。
 研究調査運営委員会および部門役員会での審査の結果,平成26年度の受賞者は,次の5名の方に決定いたしました。表彰は,同志社大学で開催されました平成26年電力・エネルギー部門大会の表彰式(9月11日)で執り行われました。

件名 受賞者(所属) 受賞理由
「接地技術発展への貢献」
高橋 健彦 殿
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 長年にわたり接地の研究に従事し、特に接地抵抗計算の多層理論を構築した。この多層理論は、UHV仕様の発変電所等の接地設計に多大な貢献を果たした。また、保安用接地や雷保護用接地として建築物を活用する建築構造体接地の発案および実用化に関する研究を行ない、その成果は現行の電気設備技術基準解釈第18条およびJIS A 4201(1992)に反映された。
 17年間にわたりIEC-TC64の国内委員長として、建築電気設備における保安用接地、等電位ボンディング、接地システム等の規格作成に尽力しており、TBT協定に基づく国際整合化(JIS C 60364低圧電気設備)の委員長や海外講演、図書の発行など接地技術の発展に貢献した。
「雷現象観測装置の開発・試作・供給を通じての日本の雷研究発展への貢献」
茆原 正昭 殿
〔(株)ホトニクス〕
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 長年にわたり大学、研究所、電力会社等の研究開発部門に対して、製造業者として種々の電気的計測装置の開発・試作・供給を行なってきた。研究開発において必要とされる計測装置・システムは量産される見込みは薄く、研究開発部門の用意した予算額で製造および設計援助まで提供する業者は少ない。そのサービスを長年提供してきており、雷研究分野における貢献は大きい。液晶シャッタつき雷放電自動撮影カメラ、超高速度撮像装置、雷放電に伴う電磁界計測装置、風車の雷電流計測のための大口径広域帯ロゴスキーコイルシステムなど雷研究の主な成果の背景にはこれら観測装置があり、日本の雷研究の進歩を縁の下で支えてきたといえる。
「電力系統監視制御システムの技術開発への貢献」
冨田 秀明 殿
〔関西電力(株)〕
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 長年にわたり電力系統監視制御システムの技術開発に従事し、電力系統の給電運用・運転業務の実務経験と時代の最新技術をとりいれたシステム開発・実用化を行なってきた。特に機能分散型支店給電制御所システムや広域ネットワーク分散型システムで開発したIT技術を用いた先進的なシステムアーキテクチャは、システムの可用性(信頼性)を大きく向上させ、国内の多くの電力会社に採用されている。また、電力系統の系統分断AFC(負荷周波数制御)機能やELD(経済負荷配分制御)機能の高度化や電力系統の運転を支援するシステム開発・実用化にも取り組み、電力系統監視制御システムの発展に大きく貢献した。
「電線の導体サイズ適正化によるCO2排出量削減に向けての貢献」
益尾 和彦 殿
〔(一社)日本電線工業会〕
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 電線メーカと電線工業会で実務に長く携わり、設計段階で導体サイズ(断面積)を約2倍にアップ(太径化)させて通電ロスを約1/2に低減し、これによりCO2排出量削減をはかる「経済性(LCC)と環境性(LC- CO2)を考慮した最適導体サイズ決定理論」を開発した。国内外で高く評価され、規格標準化を推進して日本電線工業会規格(JCS)の規格化およびIEC国際規格化が承認された。国際規格化の達成は、IEC/TC20(電力ケーブル)における日本発の技術としては初の快挙である。今後、この規格の普及による通電ロスの低減が進めば、大幅なCO2排出量削減が見込まれ、地球温暖化対策にも大いに貢献する。
「架空送電線の大容量化・高信頼度化など技術発展への貢献」
宮崎 真一 殿
〔中部電力(株)〕
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 長年にわたり架空送電線の建設・保守・研究・開発に従事し、高信頼度な大規模・大容量送電技術の発展に寄与、基幹送電線設備の技術的基盤を構築した。低インダクタンス化による安定送電容量の拡大を図るため、世界には例を見ない超大束径6導体方式を開発して実用化した。また、耐雷性能を通常の2倍程度に向上した耐雷型架空地線の実用化や高抵抗導電釉がいしの実用化、中空鋼管用せん断ボルト方式主柱継手の開発など数多くの送電設備を開発した。
 電気学会の技術委員会や規格調査会、電中研の調査研究委員会など要職を歴任しており、架空送電線技術の発展に貢献した。